BLOG

ナンモリブログ

2026.02.18

writer:H.T.

数学豆知識

モンティホール問題

高校数学でよく取り上げられ、直感だと納得がいかないことで有名なモンティ・ホール問題。今回はその基本的な仕組みと、条件を変えた時にどうなる?の部分を少し掘り下げてみたいと思います。

まずは基本のおさらいです

[モンティ・ホール問題の設定]

あなたの目の前に閉じたドアが3つあります。
1つのドアの向こうには景品の車があり、残りの2つはハズレのヤギです。
あなたはドアを1つ選びます。
すると、正解を知っている司会者(モンティ)が、残りのドアのうち必ず「ヤギ」がいるドアを1つ開けます。
ここで司会者はあなたにこう言います。「残っているドアに選択を変更しますか?」
さて,あなたはドアを変えるべきでしょうか? それとも変えないべきでしょうか?

結論から言うと、変えた方が当たる確率は2倍(23)\left( \dfrac{2}{3}\right)になり,
「3つから選ぶのに確率が23\dfrac{2}{3}???」と悩まされやすい問題です。
では、なぜそうなるのか、具体的な設定のもとにシミュレーションしてみましょう。ここでは、解説をわかりやすくするため、ドアをA、B、Cとし、
「当たり(車)はドアAに入っている」(プレイヤーは,どれが正解か知らない)
と固定して考えます。
本来、車はどこに入っていても確率は同じですが、「初期状態で当たりを引く確率は13\dfrac{1}{3}である」という点さえ変わらなければ、計算結果は同じになるため、便宜上このように固定します。

【シミュレーション1】
・プレイヤーが初手で「A(当たり)」を選ぶ場合

プレイヤーがAを選択する確率は13\dfrac{1}{3}で、その場合に司会者がBとCのどちらを開いたとしても、選択を変えた場合に当たる確率は0です。

・プレイヤーが初手で「B(ハズレ)」を選ぶ場合

プレイヤーがBを選択する確率は13\dfrac{1}{3}で,残りはA(車)とC(ヤギ)です。
司会者は正解を知っているので、必ずC(ヤギ)を開けます(Aは開けられないため)。
この場合、変えると必ず残っているA(車)に行き着くので、選択を変えた場合に当たる確率は、

 13\dfrac{1}{3}1113\dfrac{1}{3}

となります。

・プレイヤーが初手で「C(ハズレ)」を選ぶ場合

この場合も,Bを選んだ場合と同様に,選択を変えた場合に当たる確率は13\dfrac{1}{3}となります。

したがって,3つのパターンのうち2つで勝てるため,変えた時の勝率は 13+1323\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{3}=\dfrac{2}{3} となります。
「最初にハズレ(BかC)を選んでいれば、司会者の誘導によって必然的に当たり(A)にたどり着く」という仕組みです。

ここまでは、高校数学教材でよく取り上げられるネタで、「司会者が車のあるドアを開けられない」ということに気づけば、なるほどとなるところです。
では、その条件を壊し、
もし司会者が「適当」に開けてしまったら?
と仮定して、次の変則ルールの設定で考えてみましょう。確率はどうなるでしょうか。

[変則ルール]
司会者は何も知らずに適当にドアを開ける。
もし司会者が開けたドアに「車」があったとしても、「中身が見えてしまったので,そっちに変えてもいいよ」として、その車をもらえることにする。

司会者の行動に縛りがなくなり運任せになったこの状況。直感的には「五分五分(12)\left( \dfrac{1}{2}\right)になりそう」と感じるかもしれません。実際にどうなるか,先ほどと同じように、「車はAに入っている」と固定してシミュレーションしてみましょう。

【シミュレーション2】
・プレイヤーが初手で「A(当たり)」を選ぶ場合

プレイヤーがAを選択する確率は13\dfrac{1}{3}で、その場合に司会者がBとCのどちらを開いたとしても、選択を変えた場合に当たる確率は0です。(シミュレーション1と同じ)

・プレイヤーが初手で「B(ハズレ)」を選ぶ場合

残りはA(車)とC(ヤギ)です。
司会者は適当に選ぶので、どちらが開くかは運次第です。

パターン①A(車)が開いちゃった場合

 「見えた車をもらっていい」ルールなので、選択肢をAに変えることができ、選択を変えた場合に当たる確率は、

  1312 116\ \ \dfrac{1}{3}✕\dfrac{1}{2}✕\ 1=\dfrac{1}{6}    

パターン②:C(ヤギ)が開いた場合

 残ったドアはA(車)です。選択を変えるとAに行き着くので、選択を変えた場合に当たる確率は、

  1312 116\ \ \dfrac{1}{3}✕\dfrac{1}{2}✕\ 1=\dfrac{1}{6}

 したがって、Bを選び、選択を変えた場合に当たる確率は、

  16+1613\ \ \dfrac{1}{6}+\dfrac{1}{6}=\dfrac{1}{3}

・プレイヤーが初手で「C(ハズレ)」を選ぶ場合

この場合も、Bを選んだ場合と同様に、選択を変えた場合に当たる確率は13\dfrac{1}{3}となります。

したがって、3つのパターンのうち2つで勝てるため、変えた時の勝率は  13+1323\ \ \dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{3}=\dfrac{2}{3} となります。

つまり、意外なことに、元のモンティホール問題の条件を崩した「変則ルール」のもとでも、確率は23\dfrac{2}{3}のまま変わりません。

このように、具体的なA、B、Cのケースで書き出すと、以下の構造がはっきりします。
「最初にハズレ(BかC)を引いている確率が23\dfrac{2}{3}あり、その場合はその後何が起きようと、変えることで必ず車(A)にたどり着ける」

一見すると複雑で、直感に反するように感じるこの問題。しかし、今回のように「当たりはA」と固定し、A、B、Cそれぞれのパターンを具体的に書き出してみると、その仕組みが驚くほどシンプルに見えてきたかと思います。

数学,特に確率の問題で「頭でっかち」になってしまうと、思わぬ落とし穴にハマりがちです。そんな時こそ、「条件を単純化して、手を動かして書き出す」という泥臭いアプローチが最強の武器になります。

デジタル全盛の時代ですが,私たちプロの編集者も、ややこしい問題にぶつかった時にペンでかいて整理するというアプローチをよく用います。自分の手で書き出すと、脳だけで考えるよりも遥かに深く理解できるからです。

間もなく大学入試が控えていますが、試験本番で「なんか納得いかないな?」と迷った時こそ、焦らず手を動かしてみるのがおすすめです。ともかく手を動かしてみるという習慣は、きっと助けになるはずです。

四月社は、頑張る受験生を応援しています。